スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Chthonic 「Next Republic」

いい加減Chthonicのことはこれで終わりにしようと思う。


ライナーノーツにもあるように、『Mirror of Retribution』までのChthonicは
まずメタル曲を書いて、そこに東洋的要素を加えるという曲作りをしていたが、
『Takasago Army』はそれらを同時進行で行うという曲作りの手法を採っている。

その結果としてリリースされた『Takasago Army』は、
従来の彼らのアルバムとはやはり大きく異なるテイストのアルバムに仕上がった。
確かに今となってこれらのアルバムを聞き比べてみると、明確な違いが認められるのは事実。


『Mirror of Retribution』は、やっぱりブラックメタルがベースとなっているアルバムだった。
トレモロリフにブラストビートというその代名詞がほぼ全ての曲の中で見られる。
「The Aroused」なんて凄くCradle Of Filthっぽいと思った。

でも決して彼らは決して凡庸な単なる一ブラックメタルバンドではなかった。
その大きな要素が、台湾的な、東洋的なテイストの導入だった。
改めてそのキーとなる音を探っていくに、その効果は明確に「二胡」という楽器にあったのだと、
今の耳でこのアルバムを聴いていくと、思う。

実際初めて「Blooming Blades」を聴いたとき、
唐突に二胡のフレーズが飛び出してきたときには、おおーって思った。

その驚きは、単純なかっこ良さに基づくものではあったものの、
女子十二楽坊が使っているような楽器が、メタルに、
しかもかなり過激な部類に入るメタルに融合するんだという新鮮さという点が大きかった。

ザクザクのギターリフをバックに飛翔する二胡のメロディはあまりにも美しく
メタル的なカタルシスに溢れていた。

『Mirror of Retribution』はほぼ全ての曲で二胡が重要なパートを担っている。

名曲「Forty-Nine Theurgy Chains」は、
二胡なしではラストのドラマチックな展開を演出できなかったであろうし、
「Mirror Of Retribution」にしても同じことが言えると思う。

スノンという二胡専属のプレーヤーも過去に在籍していたくらいだし、
彼らは二胡という楽器にこだわりを持ち、この楽器をいかにメタルという音楽の中に融合させるか、
というコンセプトで曲作りが為されていたように感じられる。

勿論ギター、キーボードにも東洋的な要素が感じられなくはないけど、
決して二胡ほどのインパクトはなくて、
素直にかっこいいメタル的な音を鳴らしているという印象。

自分にとって昔も今もそうなんだけど
『Mirror of Retribution』は決して好きなアルバムではない。
勿論突出して好きな曲はあるんだけど、つまんないと思える曲もあるし、
何より全曲が同じようなテイストに溢れていて、飽きがくるからである。

それはやはりブラックメタルをベースとして、
ある意味定型化した曲作りをしていたからなんじゃないかと思う。
(あくまで自分の主観です。念のため)


でもそんな彼らが化けたのが『Takasago Army』だった。
前作から変化した点を上げればキリがないくらい。
実質的な1曲目「Legacy Of The Seediq」からして、変化点に溢れている。

二胡と合わせて東洋テイストを加える楽器として、
イントロでは琴をイメージとした音が導入されている。
そして、前作までもヘヴィなリフ、リズムの曲はあったけど、
更に重く、ずっしりとしたタメも感じられるようになった。

フレディのボーカルは、エクストリームなスタイルに変化はないにせよ
サビのパートでは「歌っている」ように聴こえるようになった。
そしてその音階はどことなく歌謡曲チック。
要所ではボーカルが重ねられて、重厚さが感じられるようになった。

この曲において二胡はサビのパートで使われているけど、
その存在感にボーカルが決して負けていないのが印象的。
曲の中に自然に二胡を溶け込ませた感じが、やはり前作との違いとして実感出来る。

言わずと知れた名曲「Takao」には更に大きな変化が。

ゲストとして台湾の演歌歌手を招くという離れ業。そして台湾語での歌の導入。
メタルの中に台湾テイストを入れるというより、
最早台湾の歌謡曲をそのまま取り入れたと言っても良いような仕上がり。

イントロの琴の音は絶大なインパクトだし、
これまでにはなかった三連リズムの導入は雄大さを多分に演出している。

この曲でも二胡は重要な役割を担っているけど、
Chthonic流ツインリードともいうべきギターとのユニゾンという聞かせ方で、
これまでにない二胡の使い方といった印象。

ドラムに関してもシンバルを廃してタムを叩きまくるような、
太鼓を叩いているかのように聴かせるようなフレーズが増えた。

「Southern Cross」における、フレットの上を指が走りまくるテクニカルなギターリフ、
コブシを利かせたチョーキングが効果的なギターソロ。
ギターに関して、個性が発揮され始めたもの印象的。

「KAORU」では女性演歌歌手まで登場。
全く違和感無く融合させてしまっているのは、改めて聴いても凄いと思う。

とにかく変化に溢れて、しかもそれを完全にモノにしてしまったのがこのアルバムの凄いところ。
今更ながら、完成度の高い、素晴らしいアルバムだったように思う。
このアルバムで、彼らは完全にオリジナルな音楽を作り上げた。
もうブラックメタルなんてカテゴライズは絶対に不要なところまで。

当時の自分がこれでもまだ満足していなかったんだから不思議だ。

ライブではかっこいいと思えるようになったけど、
どうしてもCDでは好きになれない「Oceanquake」が悪いんだろうな。
あとは何だかんだで音作りの不満はあったかも。ヘヴィだけど、もっさりしているというか。


このように『Mirror of Retribution』から『Takasago Army』へと、
大きな変化があった訳で、ここから更に彼らがどんな進化、
もしくは深化を見せてくれるのか、それが『Bu-Tik』に対する注目点だった。

何十回と聴いてきて感じるのが、台湾を象徴するような民族楽器が、
今回のアルバムでは更に数多く使われているものの、
それらが決して突出して聴こえなくなったということ。
二胡という楽器は全ての曲で使われているけど、決してメインという印象は受けない。

人によっては『Bu-Tik』は台湾テイストが後退したアルバムって言うかもしれない。
そんな印象を受ける。

それが何故かというと、バンドサウンド全体に、
台湾テイストが宿るようになったから、だと思う。

その要素を今回担ったのが、ジェシーのギタープレイだと思っている。

メタルという音楽に対して人それぞれ求めるものがあると思うけど、
個人的にはやっぱりギターが最重要な楽器だと思っている。
ギターの音色、フレーズがバンドサウンドを決定付けるということは間違いない。

Iron Maidenにせよ、Metallicaにせよ、Slayerにせよ
従来になかったギタープレイがあったからこそ、彼らは新しい音楽の境地を切り開き、
多くのフォロワーを生んだのだと思っている。

一方でChthonicにおけるギターは、要所要所では光るプレイは見せていたものの、
あくまでバンドの中における一楽器という印象を超えることは自分の中では無かった。

でも、このアルバムでは明らかにギターが主役と思えるような曲が並んでいる。
インタビューでジェシーは、ギターを取って、フレディがくれたもの(デモ)を聴くと、
自然に(メロディとソロが)出てくる、と述べていた。

個人的にはちょっと信じられないんだけど、
ここまでギタリストって変わるんだーって、驚きだった。

確かにライブ見る度に演奏のキレは素晴らしくなってたし、
『Takasago Army』完全再現ライブでのソロタイムでも相当に素晴らしい演奏キメてたし、
ニューアルバムでのプレイには期待していたけど、自分の想像を遥かに超えてきた。

ギターリフを一つ一つ追いかけていってもつまらないリフが全然無い。
インタビューでも語っていたけど、アジアの音階を取り入れたリフ、が素晴らしく、
ギターだけ聴いていても全然飽きない楽曲が揃っている。

何より素晴らしいのがギターソロ。
『Mirror of Retribution』あたりでは正直つまらないソロもあったし、
そもそも『Takasago Army』はそんなにギターソロが入っていなかった。

『Bu-Tik』はこれぞメタルって感じにギターソロが各曲に詰まっている。
でも決してソロありきの長いパートがある訳ではなくて、
あくまで曲を彩る一要素といった趣ではあるんだけど、存在感が抜群。
これまで二胡が担っていた役割をギターが担うようになったんじゃないかって思うくらい。

「Between Silence and Death」でのギタープレイは本当に素晴らしい。
『Mirror of Retribution』『Takasago Army』の流れを汲んだギターリフは、
より鋭利さを増した気がするし、トレモロフレーズは大いに哀愁を演出している。

サビのパートでは二胡に負けない哀愁のギターフレーズが炸裂。
台湾テイストを既にギターで演出できるようになってきた感じ。

中間部のギターソロは、これまた決して難しいことは一切やっていないんだけど、
クライマックスに向けた「転」の役割を見事に果たしている。

圧巻はラストのギターソロ。フレディのボーカルの裏でギターが飛翔しまくっている。
決して弾きまくらず、音を丁寧に繋いで、感動的なクライマックスを演出している。
この曲のバンドサウンドが終わって二胡のソロパートが出てくるけど、
アルバムの中で、ようやくここで二胡が主役になるって感じ。

また、「Resurrection Pyre」のギターソロも新機軸。
他の曲とは異なるスケールを使ったようなソロの組み立てになっていて、
中間部のダブルチョーキングの箇所にはおおーってなった。こんなソロ弾けるんだーって。

フジロックでも共演したマーティ・フリードマンに明らかに影響を受けているんだろうけど、
マーティの要素に従来のエクストリームなギタープレイが融合してきて、
かなり個性あるギタープレイヤーになってきたという感じ。

これまで二胡という楽器が担ってきた役割を、
ギターという楽器でも演出出来るようになってきたこと。
それが『Bu-Tik』における大きな変化点であると個人的には思っている。

初めてこのアルバムを聴いていて、
自分には『Takasago Army』の延長線上とは思えないなーって感想を抱いたんだけど、
それはギタープレイによるものなんだろうなと、後から気付いた。

『Bu-Tik』はアルバムのコンセプトが「闘争」であるから、
アグレッシブな曲が並ぶのは必然であったように思う。
当然ながらその表現においては、ギターの持つ攻撃性は有用であっただろうし、
だからこそギターが前面に出るようになった。

そしてその「闘争」の裏にある悲哀。

彼らが各曲で描こうとした闘争は決して成功していない。
闘争に向かった闘士達は皆、命を落としたり、闘争を余儀なくされたり、と。

でも、きっとその闘士達は、そんな自身の身の上に起こるであろう結末を覚悟した上で、
闘いに向かったであろうと想像する。

Chthonicが今作で描こうとした「悲哀」はそのような背景に基づくものだと思っている。
自由を求めて闘ってきた人々。しかし決してその願いは叶うことなく、多くの人々が倒れてきた。
その無念の表現。

このアルバムのコンセプトを掘り下げていく中で、「怒」と「哀」が純化され、
特にギターという楽器で表現される「悲哀」の深さが増したんだろうなと感じた。

ジェシーは今作のギターフレーズは自然に出てきたと述べているけど、
彼自身がギターで何を表現すべきか、
今作に関しては明確であったからじゃないのかなと想像する。


ジェシーのことばかり語ってきたけど、他のメンバーの演奏に関してもきっと同じで、
『Takasago Army』以上に情感に溢れたプレイを聴くことが出来る。

きっと『Bu-Tik』のコンセプトを各人が理解し、
彼らが為すべきものは何かという点をクリアにした上で、
各々が技術を磨き、そして魂を込めて演奏したのがこのアルバムなんだと思う。

「Next Republic」で感じられる情感は本当に凄まじい。
ギター、キーボード、ボーカル、そしてドラムとベースがイントロから渾然一体となって
襲い掛かってくるかのような演奏は圧巻だと思った。

表現したいことが明確になり、それを表現する手段を彼らは身に付けた。
その結果が反映されたのが『Bu-Tik』というアルバム。

たぶん今の彼らなら、民族楽器や台湾語の歌を省いても、
台湾テイストに溢れる楽曲を作り、演奏することが出来るんじゃないかと思える。
そんな境地に来たような気がするから、僕は『Bu-Tik』について、
単なる『Takasago Army』の延長線上には思えないという感想を抱いたんじゃないかと思う。


でもここまで来たら、次に彼らはどこに向かうんだろうと心配になってしまう。
これ以上台湾テイストの純化、深化を突き詰めることが出来るのか。
個人的には、二胡を一切使わないアルバムを聴いてみたい気持ちもあったりするけど、
それは彼らが選ぶ道だから、素直にそれを楽しみに待っていたい。

とはいえ、とにかく今はライブ。
『Bu-Tik』の楽曲はライブでどのように響いてくるのか。
前回披露された「Set Fire to the Island」が超絶的にかっこ良かっただけに、本当に楽しみ。

早くライブ観たい。観たばっかりだけど、またすぐ観たい。
そして『Bu-Tik』が世界的に売れて、もっと高いステージに彼らが上ることを願ってやまない。


うーん、これだけ書いてもまだ書き足りないなあ。
やっぱりまたChthonicのこと書くかも。


B00CBT1GHEBu-Tik
Chthonic
Spinefarm 2013-05-30

by G-Tools



Chthonic 「Next Republic」

テーマ : お気に入り&好きな音楽
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

捕鯨船団

Author:捕鯨船団
1979年生まれ。
東京都町田市在住。
電子部品の技術開発に従事。

30超えにも関わらず、
楽器をドラムに替え、
学生時代以来のバンドを始めた
今日この頃。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
FC2カウンター
Twitter...A

hogeisendan < > Reload

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。