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Going Steady 「アホンダラ行進曲」

僕は異動が決まり、4月から新しい職場に行く。
そのことは今月の頭に分かっていたんだけど、自分の気持ちがそれ以前と何か変わったかというと、
何も変わっていなかった。

3月上旬は自分の開発品の工場での初生産があり、その対応に追われていたし、
中旬から今日までお客さん要望の設計変更対応に追われていた。
量産がもう6月に迫っているのに、この時期の設計変更というものは非常に厄介で、
色々な部署、仕入先との調整に追われて、とにかく「今」を生き抜くのに必死だった。

僕より忙しい人なんて世の中にいっぱいいるの知ってるから、
忙しいなんて言葉は出さなかったけど、でも自分の気持ちとしては「忙しかった」。
寝る前にはずっと次の日のこと考えていた。眠れないからデスメタル聴いたり、酒飲んだり。
睡眠が浅いから、慢性的に頭がぼーっとしていた。

自分が抱えている仕事上の課題は依然として山積み。
引継ぎのための整理も出来ず、とにかく早く対応しなければならない案件に手をつけて、
4月に向けたレールを作るのに精一杯だった。

でも今日で、とにかく早く対応しなければならない案件に対しては、
手を打つことが終わった。とりあえず、最低限の仕事はこなした。
少しほっとして、僕は夜、会社の屋上に出て、タバコを吸った。

まだ、明日があるけど、今日のうちにお礼のメールを打っておこうか。
タバコを吸いながら、その考えが浮かんだ。

今の職場の人間に対しては、直接顔を合わせているから、改めて挨拶する必要はない。
でも時として、お互いの立場故に衝突も多かったけど、
僕の窮地を想像以上の底力で救ってくれた工場の方々には、
何らかの区切りをつけなければいけないと思っていた。

僕の工場は東北にある。
電話やメールのやり取りはするけど、直接顔を合わせる機会は出張のときくらいである。
本当はもう一回、今月に出張行きたかったけど、とても行ける状況でなくて、
あっという間に月末になってしまっていた。

思い立って自分の職場に戻った。
僕の職場は普段夜遅くまで残っている人間が多いんだけど、
大規模な部署異動があったおかげで、引越し対応で公暇を取っている人間が多く、
いつもより今日、人は少ない。

そんな環境で僕はまた自分のPCに向かい、メールを打つ。

自分の素直な想いを綴っていたら、あっという間に長文になった。
普段なら怒られる長さだ。もっと簡潔にまとめろって。ムダな時間メールに使うんじゃねーって。
でも10分もかかっていなかった。僕が今思うことを素直に綴った。

そして改めて僕の文章を読み返してみて、急激に自分の環境が変化することを実感した。

僕はもうこの人達と一緒に仕事を出来なくなる。
メールの宛先に入れた方々の名前を、もう一度見返していた。

本当に色々なことがあった。
2年前に今の部署に移ってきて、仕事のやり方なんて分からなかった。
先輩後輩の仕事を観察して、見よう見まねでやってきた。
自分の力のなさに対して、歯がゆく思う日々が続いた。

でも怒られながらも、自分でいうのも何だけど、
いつの間にか自分は認められていると感じるようになった。
打ちのめされても立ち上がる、そんな経験を続けていくうちに、明らかにまず自分が変わった。
そして周りが自分を見る目が変わった。

同じ苦労を分かち合うことで、信頼関係が生まれた。
昼間は色々とぶつかり合っても、夜に一緒に飲みに行って騒いでと。

大体工場に行くレベルの状況って、あまりいい状況じゃないからなんだけど、
でも僕は毎回工場に出張できるのが楽しみになっていた。
あの人達と仕事をして、酒を飲むのが、楽しかった。

そんな日々が、4月からなくなる。

人の少ない職場。僕の胸に寂しさが急激に込み上げてきた。
涙をこらえるのに必死だった。

会社という空間の中で、ここまで自分の感情が揺らいだのは初めての経験だった。

僕は決意して、メールの送信ボタンを押した。
自分の二年間の、区切りをつけた瞬間だった。

自分は春という季節が好きである。特に4月は新しいことが始まる季節。
新しい人間との出会い、新しい環境、新しい組織。
僕は基本的に変化は好きな人間である。

でも今年ほど、春が来ないでほしいと思った年はなかったかもしれない。
ずっと冬でいい。そのまま寒いままでいいんだって。

残酷なことに、今年もまた春がやってきた。
今日はそんな春を実感した一日だった。


帰りの電車の中で、自分が二年前に書いた記事を読んでいた。
http://hogeisendan.blog63.fc2.com/blog-entry-220.html

当時の自分、今の自分の姿はきっと想像していなかった。
人生って先が読めないから面白い。

僕は人生に対する目標はある。
でもそれを実現するための将来の自分のあるべき姿なんてイメージできないし、
極端に言えば、自分が具体的にやりたいことが何かなんて、未だに分からない。

そんな将来設計がないからこそ、同世代の人間が次々と家族を作っている中で、
自分が未だに一人でいる理由なのかもしれない。

危機感がない訳ではないけど、でも今の自分の一日一日は、はっきりと生きている実感がある。
だから今はそれでいい。積極的に人生に流されてしまおう。そう思っている。

申し訳ない言い方になるけど、僕はこの時代に生まれて良かったなんて思っていない。
でもこの世に生を授けてくれたことに対して、自分が今生きていることに対して、
僕は感謝している。

未来なんて分からないから、人生は面白い。
4月からの自分の生活、どうなるか楽しみだ。


死にかけたままの情熱が「こんなもんか」と僕に問いかける
失いかけてた希望の光が「ここまで来い」と僕を呼んでいる

まだ見ぬ明日に…
まだ見ぬ明日に…
くそったれの明日に
何があるのか僕は知らない


B00005L9XWさくらの唄
ミネタカズノブ GOING STEADY
UK.PROJECT 2001-07-06

by G-Tools



Going Steady 「アホンダラ行進曲」

テーマ : お気に入り&好きな音楽
ジャンル : 音楽

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プロフィール

捕鯨船団

Author:捕鯨船団
1979年生まれ。
東京都町田市在住。
電子部品の技術開発に従事。

30超えにも関わらず、
楽器をドラムに替え、
学生時代以来のバンドを始めた
今日この頃。

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