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ChthoniC 「KAORU」

映画『セデック・バレ』を観てきた。
http://www.u-picc.com/seediqbale/about.html

1930年に起きた台湾原住民による抗日暴動事件の霧社事件を描いた、台湾の映画。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%A7%E7%A4%BE%E4%BA%8B%E4%BB%B6

結論から言うと、凄く面白かった。
決して自分は映画を多く観るタイプではないにせよ、これまで観てきた映画の中では、
トップレベルの感銘を受けたような気がする。

基本的には史実に基づいたストーリーで、
セデック族を支配する日本警察は悪者として描かれている。
この面においては、短絡的な見方をすれば「反日」映画として捉える人もいるのかもしれない。

でも監督が明確に否定している通り、決してこの映画は反日映画ではない。
監督のインタビューにおける下記の言葉がそれを物語っているし、
実際に映画を見ればそれが理解できるはず。

「他者の価値観や信仰を否定した時、衝突が起きる。
 映画には完全な善人、完全な悪人は出てこない。絶対的に良い文化などない。
 異なる価値観を認め、真摯に向き合った時、互いを理解できるのではないか」

http://topics.jp.msn.com/entertainment/china/article.aspx?articleid=1793596

安藤政信演じる小島源治は、家族が殺されるまでは
台湾人からも信頼される善人として描かれていたし、
台湾守備隊司令官の鎌田弥彦は当初こそ原住民をバカにした態度を取っていたが、
闘いの中で彼らに感銘を受け、武士道の精神を引き合いに出すほどの理解を示すようになる。

決して二元論的な善悪の観点で、全ての日本人を悪人として描くのではなく、
バランスを取って描ききろうとする配慮が感じられた。
安藤政信、木村祐一は台湾でも人気みたいで、彼らを起用した狙いも、
日本人=悪という観念を直感的に抱かせないためという狙いがあったらしい。

マヘボ社と対立するトンバラ社はセデック族という台湾原住民でありながら、
日本人と組み、鎮圧側に回る訳だけど、決して悪者として描いてはいない。
頭目の苦悩がしっかりと映画の中で描かれていて、
裏切り者というレッテル付けを拒否するかのような配慮が見られる。

自分はこういう歴史の描き方が好きだ。

歴史における事実は一つしかない。起こった出来事は一つだけである。
そこに対して、どのような評価を行うかが千差万別となる。

個人的な印象だけど、例えばアメリカ映画なんかは、
善悪をはっきりさせて歴史を解釈する傾向があるように思うし、
某近国などは、日本=悪という描き方が刷り込まれているように思える。

そんな中で、出来るだけ善悪の評価付けを回避し、
ありのままに歴史を描こうと配慮したこの映画が、
自分にとっては日本人的にも思えて、凄くしっくりくるように思えた。

勿論英雄的側面を強調するために、戦闘においてセデック族がある意味無双的に描かれ、
史実と異なっている点があるなど、非難されるべき点があるのは事実。

日本側の死者は兵士22人、警察官6人である一方で、
セデック族側の死者は自殺者含めて700人ほどとされているが、
映画の中では明らかに日本側の方が被害が甚大であるかのように描かれている。

でも、自分にとってはそんなことはどうでも良いと思えた。
先に述べたような歴史の描き方が自分にとってしっくりときていたということもあるし、
単純に戦力的には劣勢なセデック族側が、圧倒的戦力に立ち向かっていく姿は、
民族の壁を越えて痛快に感じられたという点が大きい。

自分はこの映画を観て、日本と台湾の信頼関係がなければ、作れない映画だと思った。

歴史的な事件の映画化は、その事件が近代であればあるほど、物議を醸すように思う。
描き方によっては、最悪外交問題に発展しかねない。

でも幸いにして、台湾と日本は現在凄く良好な関係にある。
短絡的に「反日」と捉えられかねない題材であっても、
日本相手ならばきっと作品として受け入れてくれるであろうこと。

その信頼感があるからこそ、監督はこの映画を制作出来たんだと思うし、
日本上映を望んだんだと思う。

それでも監督は日本での評価に凄くナーバスになっていたようだけど。
映画館での挨拶で、この映画での描き方が
日本の人々に受け入れられるか心配しているって言ってたし。

少なくとも映画館で一緒にこの映画を見た人達は、明らかに監督の意図を理解し、
『セデック・バレ』という映画を受け入れていた。

第一部、第二部ともにエンドロールが終わるまで立ち去る人なんで一人くらいだったし、
終演後にはグッズ売り場や監督の周りには人だかりが出来てたし、
人々の話し声に耳を傾けていても、映画を賞賛する声が全てだった。

とにかく素晴らしい映画。
各々のシーンを取り上げて感想を綴っていたら、ブログの記事が5本くらい書けそうな感じ。

ネタバレは良くないから詳細は書かないけど、
日本警察として登用されたセデック族の若者、花岡一郎、二郎が
台湾人と日本人の狭間に立ったが故の苦悩、
そしてセデック族の女達の「強さ」には、涙が出そうな切なさがあった。

難しい話は抜きにしても、ストーリーは凄く面白く、
あっという間に物語に引き込まれてしまう強い力を持った映画。
合計4時間36分という超大作だけど、あっという間に時間が過ぎていく。

本当に多くの人達に観てもらいたいと心から思える映画。
決して賞賛ばかりではないだろうけど、絶対に各々の心に響くものがあるはず。

歴史の中に、自国と交わった他国の歴史の中に、
未来の自国が進むべき道を見出すことが出来るような、そんな映画。

ちなみに、映画を見終わった後に、配給会社の社長さんと話す機会があった。

台湾で『セデック・バレ』が公開されたのが2011年で、日本で公開されたのが2013年。
これだけ間が空いた理由について聞いてみたんだけど、
やっぱり映画館側との調整に時間がかかったんだと言っていた。

監督含め配給側はとにかく4時間36分の完全版の公開にこだわっていたんだけど、
大手シネコンなど、完全版の公開は認めない映画館が多く、
上映の交渉が長引いたことがその主要因になったと言っていた。

同時に日本も当事者になっている事件を描いているという政治的なデリケートさも、
少なからず影響したということも言っていた。

こういった映画こそ多くの日本人に触れてほしいのに、
このような現実があることは、やっぱりちょっと寂しい。

日本の映画界に関しても、もっと『セデック・バレ』のような、
人間の本質をえぐるようなスケールの大きな映画が生まれないことが残念だと言っていた。
そんな映画にお金が出ないから仕方ないんだけど、と。

ま、配給会社の人はでも、こういう状況を変えられるように頑張りたいと、
力強く語ってくれたわけなんだけど。
彼の想いが届いて『セデック・バレ』がヒットすることを祈ってやまない。


元々この映画を観たのもやっぱりChthonicというバンドがきっかけであることは間違いない。
『Seediq Bale』と正に『セデック・バレ』を描いたアルバムを作っているくらい、
台湾の歴史を自らの音楽に描いているバンド。

ちなみに、『Takasago Army』は武装蜂起を起こしたセデック族含めた
台湾原住民により構成された高砂義勇軍を描いたコンセプトアルバム。
『セデック・バレ』を観てからこのアルバムを聞き直すと、
なんかまた違った世界が自分の前に現れるようで面白い。

Chthonicファンの方はやっぱりこの映画は観るべきですよー。


B0055542XGTakasago Army
Chthonic
Fontana Universal 2011-09-06

by G-Tools



ChthoniC 「KAORU」
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テーマ : お気に入り&好きな音楽
ジャンル : 音楽

プロフィール

捕鯨船団

Author:捕鯨船団
1979年生まれ。
東京都町田市在住。
電子部品の技術開発に従事。

30超えにも関わらず、
楽器をドラムに替え、
学生時代以来のバンドを始めた
今日この頃。

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