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The Velvet Underground 「European Son」

映画『人間失格』を観る。あの太宰治の小説の映画版。


僕はこの小説を高校時代から定期的に何回も繰り返して読んでいる。
よくこの小説は若者の共感を…とか、青春を描いた文学…、なんて評され方をしているようだけど、
僕は決して「共感」しているから読んでいるのではない。

この小説では、太宰治本人を重ね合わせた主人公である葉蔵が、
周囲の人々、社会に対して自身の内面をその都度吐露していく。
大よそ世間から期待されるような感情からは遠く、その内面は酷く恐怖に満ち溢れている。

葉蔵は世間との折り合いを、道化という手段によって採ることになった。
周りの人間が期待するように振る舞ってはいるものの、俗な世間を軽蔑し、
周囲の人間が考えていることが分からずに、自分の内面を包み隠して、生きていく。

そういった葉蔵の内面が、僕の一面と重ね合わさっている気がするから、僕はこの小説を読む。
自分の醜い一面を再確認するのが目的なのかも。

葉蔵は容姿もいいし、センスもいいし、頭も良いので、決して共感の対象ではない。
ましてや望まずとも、一般的な倫理観を持ってしまっている僕にとって、
自殺願望もないし、女を渡り歩くなんて出来ないし、葉蔵、というより太宰はあまりにも遠い存在である。

でも、なぜか彼の存在は、酷く自分達に近いような気がする。
上手く言えないけど、こんな感覚があるから、太宰って今でも読まれてるんじゃないかなと思ったり。
僕が好きな作家の一人。


まー、とにかく僕はこの小説に格別の思い入れがあった訳です。
思い入れが強ければ強いほど、小説と映画のギャップが大きくなるのは目に見えていたので、
迷ってはいたんだけど、やっぱりどんな映像として描かれているのかの興味が勝り、観に行く。

そんで感想だけど、絶賛とはいかないけど、なかなか良かった。
小説読んだことがある人は、観て損はしないんじゃないかって思った。

葉蔵の内面の吐露が軸になって展開する小説とは違って、
映画では葉蔵を取り巻く人々との関係が焦点となって、展開していくんだけど、
出演者の皆さん、それぞれ印象に残る濃密な演技してたと思う。


主役の生田斗真は、僕の抱くイメージに近かった。なんといってもかっこいいし。
ちょっとピュア過ぎる嫌いがあって、もう少しダークサイドな部分が欲しかった気がするけど、
堀木がツネ子とはキスできないと彼女を卑下した後、卑屈にうっすらと笑みを浮かべるシーン、
ヨシ子の情事を目撃し、屋上で恐怖感に襲われるシーンの演技には引き込まれた。

女性に対する優しさ、それが醸し出す色気というものも表現できてたと思う。
鎌倉の海での心中前のシーン、テツにリンゴを差し出して一緒に食べようと薦めるシーンなど。
あれは惚れるわ。仕方が無い。本質的には、葉蔵はきっと優しい、人間らしい人間だったんだと思う。

ちなみにリンゴのシーンは、少年時代のアネサとの絡みでも、同様のシーンがあった。
少年時代はただ差し出すだけだったけど、人間失格になってからは、一緒に食べた。
ここらへんは計算された演出って感じで、良かった。
原作ではリンゴではなく、柿で、しかもテツとはそういうシーンはないんだけど。

堀木役の伊勢谷友介も、葉蔵に嫉妬する感情が局所局所でにじみ出てくる、いい意味で嫌らしい演技で、
これもまたイメージ通りで良かった。
ただ葉蔵と堀木の関係は、小説だともっと複雑な心理の動きと変化があった筈なんだけど、
そこらへんは時間の制約上、表現し切れなかったんだろうな。

女優陣の演技も良かった。
ツネ子役の寺島しのぶは陰のある未亡人役がハマりまくってたし、
ヨシ子役の石原さとみはとにかくピュアで可愛かったけど、
犯された後の陰惨さはそのコントラストと相まって、見てていたたまれなくなるくらいの演技だった。

一番は何といってもテツ役の三田佳子だった。
小説だとテツと葉蔵の絡みは殆ど綴られてなかったんだけど、映画ではかなり膨らまされていた。
犯す、という表現がぴったりに、徐々に葉蔵に絡んでいく演技は迫真だった。
怖くて目を背けたくなるくらいだった。

人間失格になった葉蔵ではあったが、なお誰かに救いを求め続ける。
そういった姿を演出したかったんだろうな。
小説だと完全に無感情な人になってしまったって感じなんだけど。


小説ではなかった部分の演出といえば、中原中也を登場させていたところ。
最初、えっ、って思った。この人小説出てねーだろって。

ちょっと陳腐な演出だと思ったけど、彼が死に行く一方で、
葉蔵は自殺未遂を繰り返しながら生きながらえてしまうという対比が出来た訳で、
まあこれはこれで良かったのかも。中原に餞の酒を酌むシーンは良かったし。


通しで見れば不満を抱くところはいっぱいある。
特に少年時代のエピソードの場面があまり効いていないのがなぁ…と。
少年時代から葉蔵は道化に精を出し、それが大人になっても続いていくというところの表現がほしかった。

だからこそ竹一との絡みが引き立つわけだし、
その後の自堕落な人生に繋がっていくわけだしと。

権威の象徴であり、恐れの象徴である、父の存在ももっと引き立ててほしかった気も。
ヨシ子が犯される日に、葉蔵と堀木が激論を交わすシーンももっとほしかった気がする。


とはいえ、小説簡単に読み返してみて思ったけど、よくここまでやったなあと思う。
特に葉蔵の内面を直接的にナレーションなどで吐露するのではなくて、
人との関係の中で、あの小説を描ききろうとしたところには、素直に賞賛する。
あとは、やっぱり役者陣の好演、それに尽きる。

また近いうちに、ディープに「人間失格」を読もうと思った。
今でも自分を道化だなって思うときあるもんね。


無理に音楽と絡めるのやめようかなとも思っていたけど、せっかくなので。

映画見て色々とあって帰ってきて、簡単にパラパラと小説読み返してたんだけど、
久しぶりにベルベッツのファーストを引っぱり出して、読みながら聴いてみたら、ハマった。
あのどことなく退廃的な雰囲気と、人間失格の雰囲気ってリンクするみたいです。

特に「European Son」。
この曲で鳴らされるノイズの嵐は、まるで人間の内面精神の混沌と錯綜を表現しているように聴こえます。

人間の苦悩とリンクするような。
永遠に続くかのようなノイズは、精神が崩壊してしまうんじゃないかってくらい、
ただひたすらに鳴らされていく。


B000002G7CThe Velvet Underground & Nico
The Velvet Underground
A&M 1996-05-07

by G-Tools



Velvet Underground and Nico 「European Son」 音のみ
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テーマ : お気に入り&好きな音楽
ジャンル : 音楽

プロフィール

捕鯨船団

Author:捕鯨船団
1979年生まれ。
東京都町田市在住。
電子部品の技術開発に従事。

30超えにも関わらず、
楽器をドラムに替え、
学生時代以来のバンドを始めた
今日この頃。

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